お灸とユーモア

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 画像のもぐさは滋賀県にあるお灸メーカー、山正で製造されています。

点灸というお米くらい小さくひねった灸を最後まで、または8分くらいまで燃やすお灸に使います。これは不純物が少ない超高品質もぐさだからできること。シュッと燃えてキュッと熱を感じる気持ち良いお灸です。

世界的にみても日本のもぐさというのは高品質で、点灸のような繊細お灸ができるのはお灸メーカーさんのご尽力の賜物とも言えます。ただそのお灸も現代では存続が危ぶまれているようです。

鍼灸雑誌「医道の日本」3月号によるともぐさの販売量は激減、もぐさのみに関わらず伝統医学全体としても「闘って生きるか、さもなくば座して死を待つか」という状況にあるそうです。もぐさが使われなくなって生産できなくなればお灸堂としては死活問題ですが、多くの業界が転換期にあって明るい先行きがみえない昨今、私の属する鍼灸業界も模索が続いています。ただこのような論調は些か悲観的過ぎる感もあるのかな…と私は思っています。

現場で毎日お灸を据えさせて頂いている身としては患者さんのお灸を求める声は減少するどころか年々増えている気さえします。真面目な方ほど「このままじゃダメだ‥」となりますが、怖い顔をしているとなかなかもって近寄りがたいですから、思っていても顔だけは笑っているような心持ちも時には必要です。

同業者からはよく「おまえは楽しそうにやってていいよな」と言われます。「そりゃあ毎日楽しいけどサ、胃が痛くなるような日だってあんのよ」という言葉を寸前で吞み込んでいますが私にとって仕事ってそういうものです。(実際楽しいですが)

泣いていても笑っていても苦しい時は苦しいもの。それならせめて笑っている方が少しばかり前向きです。ドイツの哲学者デーゲン氏曰くユーモアとは「にもかかわらず笑うこと」だそうで。最近上場されたほぼ日の糸井重里氏の言う「やさしく、つよく、おもしろく」もこれにあたるのではと思っています。

「つらい患者さんと目の前にしてユーモアとは何事か」と怒られてしまいそうですが、にもかかわらず笑うユーモアを持てば業界のみならずすべての人にとって何らかの光は見えてくるかもれせません。お灸堂は業界のユーモアを(勝手に)担当しています。