尾道でお灸堂

「鋤柄さん尾道でお灸教室やりませんか?」

京都から尾道へ活動の拠点を移して、いぐさの普及活動をしているブチさんからそんな誘いをもらったのは一昨年の夏頃。京都のころからいつも小難しい顔をして、コツコツと面白い企画をつくる彼女の誘いとあって二つ返事で快諾した。その日からのんびりと準備をはじめてイベント自体が決行となったのは翌年の1月。ちょうど尾道に行く用事があったご近所のゾノさんとおじさん2人の尾道旅。

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京都駅からバスでゆられること数時間すれば目的地のJR尾道駅へ到着する。尾道駅を挟んで向かい側は海。そして尾道ラーメンの看板の数々、駅前からしてすでに尾道は絶景です。ブチさんとの待ち合わせは夕方頃ということだったのでそれまでは半日ほどの尾道観光。海沿いの店で挨拶代わりに尾道ラーメンを啜ってから商店街とひたすら歩きゾノさんの目的地の「尾道デニム」へ。

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ゾノさんはこちらで打ち合わせがあるそうなので、ここからは別行動、商店街のを歩いて「アナゴノネドコ」というゲストハウス横の細い路地を抜けた突き当たりに「紙片」という本屋さんがある。ごくごく静かなピアノの音が優しい。男前のご主人とこの界隈では有名人らしいブチさんの話でもりあがる。

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商店街からすこし歩くと線路を挟んで急な上り坂に住宅地が広がって、坂の街と言われる尾道らしい風景が広がっています。様々な映画の舞台になっているそうですが、私としては少年マガジンで連載していた漫画『ぱすてる』が思い出の作品。感慨深い眺めです。坂をひたすら登って入り組んだ地形歩いていると見えてくるのが「ネコノテパン工場」さん。ガーランドが坂の間にかかってかわいらしいお店です。パンを買って歩きながら食べていると坂に住んでいる多分野良猫が、おこぼれをあずかろうと寄ってきます。少し後ろを線路手前まで追いかけてきてこれまたかわいらしい。

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駅前で仕事の終えたゾノさんと合流してからブチさんとの待ち合わせ場所のonomichi U2へ。少し仕事が長引きそうだという連絡があったので施設内にあるカフェで時間を潰すことに。コーヒーを頼んで海沿いのテラス席をおじさん2人で陣取り、熱々のコーヒーを啜る。お互いに半日歩き疲れたのか、海を挟んで向こう側に見える造船所のクレーンをぼーっと眺めながめていると「ここ数年こんなのっててなかったな。。。」どちらともなく呟やいて頷く。この数年ゾノさんは京都の五条界隈を拠点にして忙しく動き回っていたし、3年前にお灸堂をはじめた私も、仕事とはいえこんなにゆっくりとした時間を過ごすのは久しぶりでしんみりとし気分になる。


そうこうしているうち遅れていたブチさんが自転車で登場。うっすらと日焼けしてなんとも健康的な尾道ガールに進化していた。以前の小難しい顔が嘘のようで、海外生活から帰った人が陽気に変貌するように尾道の温かい気候がそうされるのかもしれない。思い出話と翌日のお灸教室の打ち合わせもそこそこにブチさんに連れられて尾道駅から少し足をのばした新開地の居酒屋「仲よし」さんで晩御飯。とりあえずビールを飲もうかと話しているとブチさんが冷蔵庫から瓶ビールを取り出して注いでくれる。おでんと小鉢をいくつか、最後はもつ鍋を頼む、私は温かいスープに熱燗が止まらなくなり、ゾノさんは手の震えが止まらなくなった。「わしが宝くじで一等当たったらさ、この辺土地を買い取って若い子たちに店をやってもらうんよ」と親父さんの十八番らしい語りを聞いてから一同感動してから世も更けてきたのでお店を後にした。

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お灸教室をする向島までは尾道駅近くの船着場から渡船で数分のところにある。運賃はたしか40円ほど。酔っ払った顔に海の風が気持ち良い。最後の最後までまで尾道は楽しい。

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ぐっすり眠って翌日のお灸教室が大盛況だったのは言うまでもありません。

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そして最後にお知らせです。私にとって素敵な思い出話ずくめの街尾道でこの度半日と少しお灸のセミナーをさせて頂きます。本当は毎年でも訪れたいところなのですが治療院の都合で尾道での講座も最初で最後くらいかなと思っています。開催は来週ですがまだ数名は定員にゆとりがあるそうですのでピンときた方はいかがでしょうか?

オノミチライフスタイルお灸学ー日本の古き良き温活ー
定員:6名
日程:3月25日(土)10:00〜16:00
授業料:10000円(全5回/税込)
会場:尾道自由大学キャンパス[広島県尾道市土堂2−9−33豊田ビル3階]
山陽本線尾道駅より徒歩15分

詳細はこちら

 https://onomichi-freedom-univ.com/lecture/lifestyle-moxibustion.html

 

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スナックを改装したブチさんいわく最も美味しい尾道ラーメンのお店「クラウン」前回は時間の都合で伺えず、ぜひとも今回のはチャレンジしたいと思っています。

 

お灸とユーモア

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 画像のもぐさは滋賀県にあるお灸メーカー、山正で製造されています。

点灸というお米くらい小さくひねった灸を最後まで、または8分くらいまで燃やすお灸に使います。これは不純物が少ない超高品質もぐさだからできること。シュッと燃えてキュッと熱を感じる気持ち良いお灸です。

世界的にみても日本のもぐさというのは高品質で、点灸のような繊細お灸ができるのはお灸メーカーさんのご尽力の賜物とも言えます。ただそのお灸も現代では存続が危ぶまれているようです。

鍼灸雑誌「医道の日本」3月号によるともぐさの販売量は激減、もぐさのみに関わらず伝統医学全体としても「闘って生きるか、さもなくば座して死を待つか」という状況にあるそうです。もぐさが使われなくなって生産できなくなればお灸堂としては死活問題ですが、多くの業界が転換期にあって明るい先行きがみえない昨今、私の属する鍼灸業界も模索が続いています。ただこのような論調は些か悲観的過ぎる感もあるのかな…と私は思っています。

現場で毎日お灸を据えさせて頂いている身としては患者さんのお灸を求める声は減少するどころか年々増えている気さえします。真面目な方ほど「このままじゃダメだ‥」となりますが、怖い顔をしているとなかなかもって近寄りがたいですから、思っていても顔だけは笑っているような心持ちも時には必要です。

同業者からはよく「おまえは楽しそうにやってていいよな」と言われます。「そりゃあ毎日楽しいけどサ、胃が痛くなるような日だってあんのよ」という言葉を寸前で吞み込んでいますが私にとって仕事ってそういうものです。(実際楽しいですが)

泣いていても笑っていても苦しい時は苦しいもの。それならせめて笑っている方が少しばかり前向きです。ドイツの哲学者デーゲン氏曰くユーモアとは「にもかかわらず笑うこと」だそうで。最近上場されたほぼ日の糸井重里氏の言う「やさしく、つよく、おもしろく」もこれにあたるのではと思っています。

「つらい患者さんと目の前にしてユーモアとは何事か」と怒られてしまいそうですが、にもかかわらず笑うユーモアを持てば業界のみならずすべての人にとって何らかの光は見えてくるかもれせません。お灸堂は業界のユーモアを(勝手に)担当しています。